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インターネットのオークションにて入手した紀伊半島産とされる
        ニホンオオカミの下顎吻端部加工品(根付け)


 

八木 博 Hiroshi Yagi

秩父宮記念三峰山博物館客員研究員

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『所蔵者』 埼玉県秩父市三峰 秩父宮記念三峰山博物館

電話0494-55-0221

 

『由 来』  

インターネットのオークションには、驚くほど様々な物品が陳列され売買されている。
二ホンオオカミ関連に限っても、Tシャツ、木工品、剥製・・・その他数え上げたらきりが無いほどなのだが、その多くは人工物か紛い物で、こういったサイトで本物に出会う事はまず有り得ない・・・と考えていた。
十数年前標本調査で出会った、上下顎揃ったほぼ完璧な頭骨に魅せられて、丁重に、
「もし譲って貰えるなら」と申し出たのだが、持ち主は予想も出来ないほどの値段を
言って来た。その頃其れなりに貯えも有ったので、考えた末お願いする事にしたのだが
いざとなって持ち主は前言を翻してしまった・・・というより、私の申し出に対し始め
から相手にしていなかったのである。若気の至りと云っては何だが、ニホンオオカミに
対して所有者の芯ねと云うか、機微が理解出来なかった恥ずべき体験を経ていた私は、
本物の標本が手中に入るとは、夢にも思っていなかった。そんな事があって、その後も
数多くの標本と接し、望みながらも私の手許に在る頭骨標本は、ニホンオオカミ以外の
物ばかりであった。
 友人の斉藤敦子氏より、私のアドレスにメールが届いたのは2003年9月の事だった。

それ以前にもニホンオオカミ関連で連絡を受けていたが、その全ては残念な結末に
なっていた。その時も一縷の望みを持ったものの、大きな期待を持つものでは無かった。
 しかし、ページを開いた私の眼に映ったその標本は、紛れも無いCanis hodophilaxの
根付けそのものだった。大分市在住の出品者に問い合わせると、北九州市の古物商から
仕入れた物で、詳細は古物商から・・・との事だった。
オークションで落札した後、北九州市の古物商に問い合わせたのだが、“通常の取引
の流れの中の商品にしか過ぎない物で、紀伊半島産で有る事くらいしか知り得ない”と
の事だった。今となっては残念な事であるが、全てを埋もれさせてしまったかも知れな
い標本を、存在だけでもこうして確認出来た訳であるので、其れで良しとするべきと考
える次第である。
尚この標本を、私物として蔵するよりも、広く世に知らしめるべきと考え上記秩父宮
記念三峰山博物館に寄贈し、長く展示する様願った次第である。


『所 見』

  この標本は、元国立科学博物館主任研究官の吉行瑞子博士よりCanis hodophilax
(ニホンオオカミ)である旨の書状を頂戴しているのでここに記して置く。

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CANIS No.9 June.1 .2005

監修:八木 博

企画:牙映像企画

発行:秩父宮記念三峰山博物館

​編集:千島 幸明

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